2016年4月より、徳島県臨床内科医会の会長を務めることになりました、たかはし内科の高橋安毅でございます。この場を借りて、会員の皆様にご挨拶申し上げます。

 私は、昭和60年に徳島大学医学部を卒業し、旧第三内科(現在の呼吸器膠原病内科)へ入局、高知、大阪での関連病院、徳島大学医学部附属病院での勤務を経て、平成9年に徳島市国府町にて無床診療所を開業致しました。
徳島県臨床内科医会へは、河野知弘先生のお声がけで入会させていただきました。現在56歳であり、会員の中では、中堅と言うよりまだ若輩の部類に入ると思いますが、関啓、近藤彰、四宮秀美、歴代の名会長の後を受け、今回会長を拝命させていただく事になり、身の引き締まる思いです。2年間、何とぞよろしくお願い申し上げます。

 さて、医療技術の進歩や生活環境の改善により、日本は世界に冠たる長寿国となりました。これは裏を返せば高齢者社会へ突入したことを意味し、我々臨床医にとっては、高齢者医療、超高齢者医療への対応が急務であると言えます。

 日々の診療にて思うことですが、高齢者の医療はオーダーメイド医療であると言う事です。90歳を越える患者さんに、今のガイドラインが本当に適用出来るのだろうかと考えてしまいます。高齢者は、肉体面でも精神面でも個人差が大きく、それは年齢を増す毎に顕著になります。中でも私たちのところへやって来る90歳を越えた超高齢の患者さん達は、ガイドラインを作成する先生達の外来へはやって来ることは少ないでしょう。高血圧、脂質異常、糖尿病をコントロールすることは、将来の心臓、脳血管のイベントを抑制するためでありますが、その目的は、これらの高齢者に当てはまるのかどうか?二次予防のアスピリンや抗凝固剤はともかく、一次予防としてスタチンを服用していただく必要があるのか?服用するとすれば何歳まで飲むのか?70歳を越える患者さんの高血圧の目標値は150となっていますが、それは80歳でも90歳でも同じと言えるのだろうか?そんな風に次々と疑問がわき起こってきます。

 そんな時に頼りになるのは何かと言うと、それは我々臨床内科医が、長年培ってきた経験、それと医者としての直感だと私は思っています。その経験と直感を、臨床内科医会に属する会員同士、共有し合うことが出来れば素晴らしいと思っています。かかりつけ医と上で書きましたが、患者のかかりつけ医の中心に居るのは、私たち臨床内科医だと自負しなければなりません。

 そして高齢者の医療で、これから避けて通れないものが、認知症の診療だと思います。2025年には、認知症患者は600万人を突破、65歳以上の5人に1人は認知症の時代がやってきます。認知症センターで全ての患者さんに対応することは不可能で、入所出来る施設も不足することは明らかです。それ故、私たちかかりつけ医が、認知症を早期発見して治療し、問題行動(BPSD)をコントロールすることにより、1日でも長く家庭で、患者も介護者も笑顔で過ごすことが出来るようにしなければなりません。私たちはそのために必要なスキルを身につける必要があります。そして認知症と向き合い、この疾患を避けないようにしなければなりません。

 また高齢化が進むにつれて、脳卒中、整形外科疾患などで寝たきり成る方が増えてきます。その予防に努めることはもちろんですが、不幸にしてそのような状態となり、急性期に入院した患者さんが、国の施策によるベッド削減で、どんどん在宅へと帰って来るようになります。そのために私たちかかりつけ医には在宅診療が求められており、それに応えていかねばなりません。

 このように、認知症、在宅診療と続いてくれば最後に私たちが直面するのが「看取り」と言う事になります。全ての患者さんを私たちが看取れる訳ではもちろんありませんが、長年私たちがかかりつけ医として診てきた患者さんは、彼らが望むなら出来るだけ私たちが看取れるように、システムを考え、在宅医療のスキルも身につける必要があります。そして日頃から本人や家族と、来たるべき最期について話し合っておく必要があります。私たちが作成して活用してきた「私のリビングウィル」が、それを話し合う端緒になればこんなに嬉しい事はありません。

 このように、変わりゆく社会構造、システムの変化、患者意識の変化に対応していくため、私たちは日々研鑽を積む必要がありますが、その知識や知恵を共有し、そのことを通じて会員相互の絆を深めることが出来たらすばらしい事だと思っています。

2016年4月
徳島県臨床内科医会 会長
高橋 安毅